三味線の糸巻、なぜ回せて止まるのか?下の図はあくまでイメージです。でもイメージは大事。
超単純な仕組みなんですが、糸巻の先、糸蔵に入る部分が単なる円柱ではなくテーパー状になっている所がミソ。差し込んで摩擦で止まっているだけなんです。
だから、回しながら糸巻を抜く方向に力を入れれば抜けます。止めるためには差し込む方向に少し力を入れます。少し押し込む感じ。調弦の際、糸蔵に指をかけるのはそのためです。押し込まずに回すだけだと、その時止まっていても弾いてる途中で緩んだりします。初心者にはこの加減がなかなか難しいんですがね。何度もやってコツをつかむしかないです。
それから、糸を緩めずに保管している時や持ち運んでいる時などに、勝手にキュルっと緩む事があります。それはおそらく湿度や温度の変化で糸巻が微妙に収縮するからでしょう。ちゃんと調整されている糸巻でも時々ある事です。
それとは別に、使っているうちに止まりが悪くなったり、滑らかに回らなくなったりする事があります。この場合、糸巻がすり減って福林との当たりが悪くなっている可能性があります。
そんな時は、一度糸巻を外して福林との当たり具合を見てみましょう。
糸巻を外すと、福林と当たっている部分はテカっています。
(注)糸巻は福林の内側全面と当たっているわけではありません。当たっているのは下の図、赤丸部分。
図の灰色線のように、幅1mm~2mmくらいで全周に均一に当たっていれば良いと思うんですが。
写真の糸巻は太い方が当たりすぎ?症状としては、それほど酷くはないんですが回すと固い所と緩い所があります。
ほいで、400番くらいの紙ヤスリでテカりがとれるくらい軽く磨きます。あくまで軽く、ですよ。あんまり力を入れずに撫でる感じで。
先端の方のテカリはまだ取れてませんが、一時的には、これだけでもだいぶマシになるはずです。
そして、糸巻を差し込んでクルクル回して、また外して当たりを見ます。↓
これくらいなら許容範囲に見えますが、実は先端の方(細い方)の当たりが、一部付いていない所があるんです。
この程度なら紙ヤスリだけで修正出来ますが、下手にやるとおかしな事になってしまいますので、自信がなければプロにまかせるべし。
で、修正すると全周綺麗に当たるようになりました。↓
ただし、削っていくと糸巻が糸蔵にだんだん入り込んでいくので(黒矢印の方向)、今度は太い方が福林の外側に当たり始めます。これをまた修正して・・・
こんな感じでええかな?
糸を張らない状態で回すとスムーズでいい感じなんですが、糸を張ってテンションのかかった状態で回すと、思ったほど改善されてないな?って事もありますけど・・・結構難しいんですよ。
今回の糸巻は、さほど酷い症状ではなかったので紙ヤスリだけで修正しましたが、もっと酷いのん、例えば・・・片側しか当たってなくてガタがあるとか、別の三味線の糸巻を付け替えるとかの場合は根本的に当たりを付けなおさねばなりませんので、紙ヤスリではなくまず平ヤスリ等でガシガシ削ります。あと、糸巻側でなく福林の内側面が汚れていたり傷ついていたりする場合もあります。
自分でやるのは、応急処置的に紙ヤスリで軽く磨く程度に止めておいた方がいいです。それ以上は三味線屋さんに頼みましょう。