◎試作~3作目◎
過去、民謡ブームの時には、けっこうリアルなミニチュア三味線も売っていて、よく売れたそうですが。今はほとんど見かけないですよね。あっても例えば、かなりデフォルメされていたり、リアルさに欠けていたりで・・・
まあ、値段的にはそう成らざるをえないでしょうけど。僕的には、もっとリアルなミニチュア三味線が欲しいわけ。
で、思ったのです。無いなら自分で作ってみよう、と。
もともと、何か作ったりするのが好きだし。
どうせなら、本物の三味線と構造も材料も同じで出来ないかなと。そして、それなりに音も出ると。
●試作
まずは、試作。棹を三つ折れに出来るか。やってみました。
とりあえずホームセンターでマホガニーの棒売ってたから、これで。
胴は一応、花林。
(下の箱は、撥入れの箱です)
何となく出来そう。もっともこの長さなら三つ折れにする必要性も無いのだが・・・そこは僕のコダワリです。
皮は張れるか。
試しに撥皮を張ってみた。手で引っ張っただけやから、いまいちやなあ。
糸は張れるか。
何とかいける。
鳴るか、さわりは出るか。
東さわりもどき、つまようじを突っ込んでみた。それとなく「さわり」らしき音が出る。
とりあえず、出来そうな感じ。
●試作品。棹:マホガニー、胴:花林、糸巻き:黒檀、皮:撥皮
試作品につき、寸法は適当、形はイビツ。まあ、なんとなく出来そうな目処がついた。
●今度は、もっとリアルに、かなりマジで製作。材料も、棹、胴とも花林で、糸巻きは黒檀。皮は、三味線屋さんで、棄てられるのを貰ってきた。
2作目にしては、かなりの出来ばえ。
●3作目は、棹に紫檀を使ってみる。(さすがに紅木は、簡単には手に入らないので)
2作目(左)よりも、ちょっと大きくなった。
これも、なかなかの出来映え。
しかし、継手がどうしても隙間開く。本物の三味線のように、ピッタリいかない。
これは、かなりの技術と経験が必要やね。木をまっ平らに削る事の難しさを思い知らされる。コンマ1mm、いや、コンマ01mm単位の緻密さが要求されるで、しかし。職人さんの凄さがわかるわ。
あと、皮の張りがいまいち。手で引っ張ってるだけやし、手は2本しか無いからね。
接着剤も、
このタイプ。乾かしてから圧着するタイプ。このタイプじゃないと、接着剤が乾く(くっつく)まで、手離されへん。
やはり、ミニ張り台とミニキセンが必要か?それが出来れば、接着剤も違うタイプのが使える。
で、ミニ張り台&ミニキセン製作。
接着剤は、
これでいってみよう。
おおっ!めっちゃ張れる!これはいい感じ。(紐のかけ方がめちゃくちゃだが) モジリは割り箸です。
くっついたみたいだから、キセン外してみると・・・
あれ?皮のテンション下がった・・・
う~ん、やはり乾燥後の接着剤の固さの問題だ。要は軟らかいのね。ゴムっぽく固まるから、皮のテンションに負けるわけだ。 エポキシ系の接着剤なら硬化後の固さが望めるけど、接着時に皮を湿らせるから、接着力が落ちそな気がする。 やはり、本物通り、ここは寒梅粉が必要なのか?・・・
・・・で、
じゃ~ん!寒梅粉!
寒梅粉を水で溶いて・・・皮を湿らせて・・・
ちょっと、しゃぶしゃぶすぎるかな?うん、絶対。まあええわ、とりあえず張ってみたれ。およよ!調子に乗っていると、1ヶ所ヤバイ・・・
・・・なんとか耐えた。乾きました。
おおっ!ええ感じ!張れてる!やはり、寒梅粉!素晴らしい。昔の人の知恵やね。利にかなっておるわ。
こうやって自分でやってみると、職人さんの技術の高さはもちろんの事、なぜそうするのか、とか、なぜその糊を使うのか、などがとてもよくわかって勉強になるし、なにより面白い。
☆さて、これまで寸法や形が適当だったので、きっちり1/3で作る事にする。
細棹、中棹、太棹と全部作ってみたくなる。 とは言うものの、実際に寸法を1/3にすると、例えば胴なんかは長唄用と五分大なら大きさの違いは出るが、五厘大なんて長唄用とほとんど同じなんだ。長唄用よりも縦横それぞれ五厘大きいだけだからね。実際に五厘大きいという事は、約1.5mmです。その1/3ですから0.5mmなわけ。ちょっと削り過ぎると0.5mmなんてあっという間だよ。 棹にしても、1/3にすると、天神付け根部分の幅は、細棹と中棹では0コンマ数mmの差しかない。
このへんはある程度デフォルメしてもいいかもね。実際にも細棹でも中棹でも太棹でも、それぞれ太目のものがあったり、細目のものがあったりするわけで。
まあ、どちらにしても、きっちり作るには、型が絶対必要になってくる。特に、天神や胴の曲面は、適当に削っているとイビツになってしまう。出来上がりの見た目が、不細工なのだ。姿が悪いのね。 あと、棹の継手も、もっと緻密にしなければ。
道具も大事で、やはり安いノミは切れ味が悪い。切れ味が悪いと効率も悪くなるし、仕上がりもいまいち。
てな訳で、次はより本物の三味線に近づけるべく、奮闘します。
◎より緻密に、本物のように◎
●継手
まずは棹の継手を、より緻密に密着させねば。光にかざした時、隙間から光が漏れるようでは駄目なのだ。
なので、継手作りの練習から。大事なのは、ホゾを切る前にいかに面をピッタリ作るか。それと角度も。とは言うものの、これがなかなか難しい。この小さな面積だから、もっと簡単に出来そうに思うのだが・・・
本物の三味線は、この何倍もの面積だ。職人さんの技術恐るべし!
なんとか継手がぴったり出来たから、ドリルでホゾ穴をあけて、
ホゾ穴を四角にします。マイナスの精密ドライバーの先を研いたものを使用。彫刻刀だと長さが足りない。
そしてホゾを切って・・・ホゾを切った面も平らにしなくてはいけない・・・
そして、つないで外して削り、またつないで外して削り・・・何回も・・・何回も・・・僕には職人さんのような技術も経験も無いので、もうこれは、集中力と忍耐力と、どこで妥協するかの問題だで!?
で、なんとか、それなりに密着させれるようになってきた。
うん、これくらいなら、まあええか。上出来、上出来。
●胴
胴の寸法は、長唄三味線の物を基準に何分、何厘大きいかで決まっているそうです。例えば、津軽や義太夫などの太棹には五分大の胴。地唄などの中棹には1分5厘大、民謡三味線は5厘大、というふうにだいたい決まっています。
しかし、実際の寸法の1/3で作るので、それぞれの差を出すのが難しい。
まずは型作り。パソコンで製作。
やはり基本になる長唄用をまず作ってみよう。型に合わせて作ってみたが・・・
これ、ちょっと失敗やな。丸みが無さすぎる。実際に削ってみないと、平面図ではわかりにくい。しかも何かひょこ歪んどるがな。
Rをもっと小さくせねば。
で、これ。
まあこんなもんかな?丸みに関しては、けっこうアバウトです。
側面の丸みを出すのも、まず、胴の輪郭のカーブを出してから、丸めていかないと、イビツになってしまう。実際の三味線の胴作りも、まずこの状態の材料があるもんね。
ただ、4枚の合わせ面を45°に切るのは、最初にやってます。削る前の角材の時点の方が45°けがきやすいし、切りやすいので。
うん、かなり本物の三味線に近付いてきて、いい感じやわ。めちゃ手間かかるけども・・・
さて、いよいよ本格的に1/3三味線製作といきましょう。