栄水の手帳2024年4月23日 三味線解体ショー?


2024年

4月23日 三味線解体ショー?


栄水の手帳、主に消耗品についてのかなりマニアックで変態的な内容が多いので今回は、知っておいて損はない?三味線の構造、構成部品等について書きます。三味線についてのページに既に基本的な事は書いてありますので、ここではもう少し突っ込んだ内容で。

三味線をバラバラにしたらどうなっているのか・・・この時点で既に変態的なんだが・・・

三味線1

普段、接着されていて外せない所は、天神と上棹、下棹と中木です。

天神には、福林(糸巻金物)、糸巻、上駒、東さわり、が仕込まれます。

天神1

天神2

長唄、地唄、義太夫等は東さわりは無く、昔ながらの押しざわりです。↓

さわり1


・糸巻は、摩擦で止めているだけなので、引っ張ったら抜けます。これ意外と盲点。ある程度三味線やってる人には当たり前の事なんですが、初めての人や知らない人にとっては「三味線壊れた!」ってビビってしまいます。焦らなくても大丈夫、そういうもんです、差し込んであるだけだから。ただし、三本の糸巻はそれぞれ場所が決まっていて、例えば 1の糸巻を2や3に入れるとガタついたり入らなかったりしますので間違えないように。大抵、糸巻に印がついています。

糸巻1

上の写真の様に印がついてます。これ自分でつけたんですがね、修正ペンで。べつに1と2がわかれば3は印いらんのですがね。この部分に印がない場合は、糸を巻き付ける部分に軽く斜めに切り込みが入っている物もあります。傷ではありません。切り込みが一本は1の糸巻、二本は2の糸巻です。糸を替える時などに見てみてください。

慣れてくれば印無くても、糸を通す穴の位置や大きさなどで、また差し込んでみればだいたいわかります。


・たまに外れる事があるのが下棹と中木です。過って三味線を倒してしまったりした時、衝撃で外れる事があります。天神と上棹もまれに外れる事があります。

外れた時は自分で接着剤で着けたりせず三味線屋さんにやってもらってください。基本的に膠で接着しますので、膠を常備してる人はそういないでしょ? 最近は膠を使わず接着剤を使っている三味線屋さんもあるみたいですが、どちらにしても、まず残っている膠(または接着剤)を綺麗に剥がして、元通りピッタリ接着しないといけませんので、そこはプロにまかせるべし。


・上駒は東さわり用と押しさわり用があります。

上駒1

東さわり用の場合、裏側に足が2本付いていて糸蔵の下端に差し込んであります。外れた時は、付いていた部分に穴が2つありますんで、元通りそこに差し込めばいいです。上駒の表面には1の糸が乗る部分にだけ溝がありますので付ける時に向きを間違えないように。

上駒2

差し込んでもすぐポロッと落ちる場合は、緩めの接着剤をちょっと付けておけばいいと思います。強力な接着剤は必要ありません。ガチガチに着けてしまうと、上場通し等の修理をする時に外せませんから。

逆に差し込むのが硬い時は、無理に押し込むと足が曲がったり折れたり、上駒本体が曲がったりしますので注意してください。ヤバそうなら三味線屋さんに頼むべし。


・福林はごく稀に外れる事があります。外れてなくても接着が取れて福林自体が動いている場合もあります。そうなると調弦が上手くいきませんし、福林自体がクルクル回っていたら調弦出来ません。

福林1

福林2

径の大きなのと小さなので一対になっています。1と3の福林は斜めになっていますので、下手に接着剤で着けると角度が合わず糸巻が入らなくなるかもしれませんので、これも三味線屋さんにやってもらった方がいいでしょう。

ついでに、福林は太棹用と細棹、中棹用では太さや天神側面に出ている部分のゴツさが違います。

福林3


・胴は4つの花林材を接着してあります。

胴1

接着はやはり膠です。最近は接着剤で付けてるのも多いかな?胴はばらす必要は殆ど無いですしね。古い三味線の場合は多分ほぼ間違いなく膠で接着されていますので、経年により接着力が弱まりバラバラになる事があります。皮の張り替えの際にたまにあるようです。新品の三味線なら10年、20年はまずそういった事は無いと思います。

四角い穴から棹を通して、丸い穴に中木先を出します。写真は太棹用五分大胴ですので、丸穴と中木先に「りんどう金物」と呼ばれる金具が付いています。

胴2


そして、胴に皮が張られ、中木先に音緒、音緒に糸を結び、糸巻に巻き付け、駒をかけます。あと、付属品として、胴掛け、天皮(天神カバー)、撥皮、胴に滑り止めのゴムを貼る場合もあります。

三味線2


・三味線を持ち運ぶ時の注意点。

三味線の棹は三分割出来るようになっていますが、分解せずに長いまま持ち運ぶ時は、糸をある程度張っておいてください。糸を張らずに、もしくは糸を外したままだと、振動で棹の継手が外れる可能性があります。継手のホゾがあまくなっている三味線は要注意です。継手が外れかけた状態で振動すればホゾが折れたりヒビが入ったりしますので。


ここまで三味線の頭から尻尾?まで、ざっと見てきましたが、別にこんな事知らなくても演奏は出来ます。

ただね、知らないよりは知ってる方がいいに決まってるですよ、僕はそう思いますね。例えばめっちゃ初歩的な話をすれば、三味線について全く何も知らない人にとっては、糸巻は引っ張ったら抜けることも、駒が外せることも知らないですよ、たぶん。三味線始める前の僕がそうでしたから。今では当たり前の事なんですがね。三味線の構造についても、どこが外せてどこが接着されてて、なぜそうなっているのか、消耗した時はどうするのか等々、自分で出来なくても全て知っていれば何かトラブルがあった時も無駄に慌てなくて済むんです。知っていれば扱い方も自ずとわかってきますしね。


さて、また次回からは三味線の各部位をマニアックに変態的に、奏者目線で見ていこうと思います。