栄水の手帳2024年4月9日 竹山流は撥皮貼らない?


2024年

4月9日 竹山流は撥皮貼らない?


・僕の考え

津軽三味線の流派については 竹山流津軽三味線のページにも書いていますが、竹山流は「弾き三味線」だと言われます。これ、結構誤解も多いんじゃないかな?と思っています。「弾き三味線」と言うと、何だか優しく弱く弾くように思われてるような気がするんですよ? いやいや、全然そんなことはないと思ってます。元々、屋内や座敷で鳴らす三味線ではないんだから、ましてやマイクなんてあるわけねえ。何の音響設備も無い屋外で鳴らすのに、優しくシャラシャラ弾いたって響くわけないです。しっかり打たねば響きませんよ。

ただし、皮を叩きにはいってません、糸を打ちにいく感じ、イメージ的には。そこかな?「叩き三味線」との違いは、音の出し方という点では。


初代 高橋竹山 曰く、「私は撥皮いらないの」・・・撥先を皮に当てないっていう事です。

ただ、この発言は竹山先生が80歳前くらいの時じゃないかな? 少なくとも「寒撥」ってドキュメンタリー番組があった1971年頃、その後1985年頃までは撥皮貼ってたよ。今の津軽用撥皮のような長いものではなかったけど、映像で見れる。「寒撥」の時で竹山先生、60歳くらいでしょ? だから、撥皮貼らなくなったのは75歳以降じゃないかな?

僕は、撥をしっかり皮に当てろと教わりましたし、津軽三味線に限らずどの三味線でも撥を使って弾く場合、撥先を皮に当てるのは基本でしょ。

僕が思うに、歳をとって体力的に衰えてきても、いい音を出すために常に模索してらっしゃったとうい事なんですよ、たぶん。歳相応の弾き方がある、という事じゃないですかね。だから例えば、40~50歳またはもっと若い人が80歳の人の真似をする必要は無いと思います。自分がその歳になった時、参考にすればいいし、その歳になってもまだまだやれるならやればいい。現に100歳越えても力強い撥さばきで演奏される方もおられるんだから。

それと、どういう音色を出したいか、にもよるんじゃないでしょうか? それは人それぞれ違うと思うし、歳とともに変わってくるかもしれません。


僕は、初代 竹山の50代~60代の力強い演奏が好きです。ただ残念なのはCD等の音源でしか知らず、生の演奏を聴いた事が無い事。でも、まさにその時期というのは、僕の師匠 栄山が竹山に付いていた時期です。当時の竹山を誰よりもよく知っているのは栄山、雲栄両師匠です。ですから栄山の三味線は、当時の竹山の三味線なんです。曲弾きなんかでも、なるほどなあと思いますし、それは決して晩年の竹山の曲弾きではないんです。雲栄師匠からもよく「おめえら若いんだから、もっと打て、もっと打て」と言われましたよ。

だからと言って晩年の竹山先生の演奏を否定しているわけではありません。今の僕には絶対出せないもん、あの音色とあの感じは。


人間ですから誰でも歳をとれば体力的にも衰えてくるものでしょう。でも音色の追求は何年やろうが何十年やろうが終わることはないと思います。これでいいや、と思った時点でそれ以上の所へ行くことは出来ませんから。でも、今の時点では撥皮貼らなくなってからの竹山先生の演奏、音色を真似ようとは思っていません。

むしろ、数十年後でも力強い演奏が出来るようにしたいなと思っています。